
血液・腫瘍グループは白血病をはじめとした腫瘍性血液疾患と各種固形腫瘍を含む小児悪性腫瘍疾患(小児がん)、非腫瘍性血液疾患、免疫異常疾患の治療と研究を行っております。これらの疾患はいずれも比較的稀であることと、特に発症時に専門的な診断と治療が必要になる小児がんについては山形県内唯一の治療機関であることもあり、県内発症したお子さんの大部分が基幹病院小児科を通じて当院へご紹介いただいております。また、JCCG(日本小児がん研究グループ)の多施設共同研究を中心に希少疾患の研究グループに積極的に参加し、病気の本態の解明に寄与すると共により良い治療法の開発に取り組んでいます。
わが国では、15歳未満の子供のうち、1年間に約2,500人(およそ1万人にひとり)が小児がんと診断されています。治療は大人と同様、主に手術、放射線治療、化学療法から成り立っており、近年の医療技術の目覚ましい発達に伴い、多くの方の命が救われるようになってきました。一方で大人のがんとは疾患の割合が大きく異なること、子どもの中にあっても非常に稀なタイプも存在すること、がんの増殖が速く多くは進行期に発見されること、治療を終えたあとの合併症(晩期合併症)に関わる時間が大人よりずっと長いこと、などから一人一人の患者さんをより丁寧に慎重に診療することが求められます。
従来の治療で根治を望むことが難しい症例に対して1990年代から急速に発展、確立してきた造血幹細胞移植については、国内でもいち早く1984年に第1例目の骨髄移植を行い、現在(2025年8月)までに187例を行っております。当科は単独でJSTCT移植施設認定を取得しており、多様化する移植治療の選択肢、特に細胞の供者が自分自身か血縁或いは非血縁の他者か、また移植細胞が骨髄、末梢血幹細胞、臍帯血のいずれであっても施行可能な体制を整え、患者さんにもっとも有利な方法を選択しております。また日本骨髄バンクからの要請に応えて主に県内在住のドナーさんに3-4泊入院いただいた上で骨髄採取を行っております。移植治療は近年進歩の著しい分野ですが、同様の国内外関係施設と積極的に協力して研究、診療に努めています。
基礎研究では先天性血液疾患についてその病因と病態の解析、また血液細胞の生理機能解析にも力を入れております。先天性血液疾患の一部には時間経過で白血病化するものがみられることがあり、この腫瘍化のメカニズムの解明に特に注目して研究を行っています。